組み立て工場で、私は黙って手を動かす
組み立て工場の喧騒の中で、私は今日も淡々と手を動かしています。
流れてくるものをただ捌くのではありません。
自分の担当範囲を、自分の手で、確実に仕上げていく。それだけに集中しています。
作業中、理不尽な文句が耳に入ることもあります。
「もっと早くできないのか」
「そのやり方は非効率だ」
正直に言えば、今でも一瞬、腹は立ちます。
昔の私なら、その場で言い返していたと思います。
でも今は、黙ってやり過ごします。
感情が消えたわけではありません。
ここで感情を使うと、そのあとが長引く。その“損”を、何度も味わってきただけです。
1.脳内では反論し、手元では役割を果たす
理不尽な言葉を向けられた瞬間、頭の中ではちゃんと反論しています。
たぶん百回くらいは言い返しています。
ただ、それを外に出さないだけです。
怒りを表に出して空気を悪くし、家に帰ってからも引きずる。
そのコストを払うほど、今の私は若くありません。
私は、与えられた役割を淡々とこなします。
心の中では、
「この時間は、ここに使う場所ではない」
そう静かに線を引きながら。
40代になると、体力も気力も有限だと実感します。
だからこそ、理解し合えない相手との衝突には、使わないと決めました。
2.往復の電車。境界線が溶ける時間
その線が少しずつ溶けるのは、工場の門を出たあとです。
朝と夜、電車に揺られている時間。
以前は、何も考えずにスマホを眺めていました。
今は違います。
工場で飲み込んだ感情。
言い返さなかった言葉。
作業中にふと浮かんだ違和感。
それらが、まとまりのない言葉として、メモ帳に流れ込んできます。
作業服を着て黙々と仕事に取り組んでいた自分が、少しずつ戻ってくる感覚。
この移動時間は、私にとって
「考える自分」に戻るための時間です。
派手ではありませんが、確実に必要な時間だと感じています。
3.深夜、AIと文章を組み直す
本当の作業は、子どもを寝かしつけたあとに始まります。
家が静かになってから、パソコンを開きます。
ここでAIと向き合います。
電車の中で書き散らした言葉を、
記事として読める形に整えていく。
「この表現は違う」
「そこまで言い切ると嘘になる」
そんなやり取りを重ねながら、少しずつ文章を削っていきます。
工場では無口な作業員の私が、
ここでは「自分のメディアをどう育てるか」を考えています。
この切り替えがあるから、私はバランスを保てています。
4.牙は、目立たない場所で研ぐ
40代の生存戦略は、会社で戦うことではありません。
会社を、生活と準備期間を支える土台として使うことです。
文句を言われても黙っている私は、弱くなったわけではありません。
本当に力を使う場所を、少しだけ先に移しただけです。
私は今日も、電車の中で少しだけ言葉を研ぎました。
誰にも見えませんが、それで十分だと思っています。
会社に魂を預けたふりをしながら、その裏で。
自分だけの**「種言(タネゲン)」**を、静かに育てていきます。


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