1歳の寝顔の横で、40代・本厄の男が、戻れない線を越えた夜
1. この生活は「楽」だ。だから、危険だ。
――この生活、楽すぎないか?
理由はなかった。
ただ、胸の奥で、鈍い警報音が鳴った。
年収は700万前後。
仕事は安定。
家族がいて、住む場所がある。
世間的には、間違いなく「順調」だ。
だが、その順調さが、あまりに摩擦がなかった。
朝起きて、仕事をして、帰って、寝る。
問題は起きない。
失敗もしない。
同時に、何も賭けていない。
3年前、副業で300万円を失った。
だが、あの損失よりも今のほうが、はっきり怖い。
失うものがない代わりに、
挑戦もしない生活。
これは安定ではなく、思考停止だと感じた。
2. 1歳児の全力が、眩しいんじゃない。正直、怖かった。
今日は一日、息子の子守だった。
まだ1歳。言葉は通じない。
だが、すべてが全力だ。
泣くときも、笑うときも、転ぶときも。
躊躇がない。
失敗を「失敗」と認識していない。
その姿を見ていて、胸の奥がざわついた。
――俺は、いつからこんなに無難になった?
効率。
失敗回避。
空気を読む判断。
大人としては正しい。
だが、この子に見せたい背中かと問われると、答えに詰まった。
正直に言う。
眩しいのではない。怖かった。
このままいけば、
「やらなかった理由を、理屈で説明する父親」になる。
それだけは、避けたかった。
3. もう戻れない線を、いくつか越えた
私は最近、いくつかのものを捨てた。
- スマホゲームはすべて消した
- 通勤時間は、AIとの壁打ちに変えた
- 人付き合いは、ほぼ断った
- 地元の友達とは、もう3年会っていない
楽しいかと聞かれたら、正直、楽しくはない。
むしろ、
「本当にこれでいいのか?」
という感覚は、ずっとある。
自分が心の底から楽しめる時間。
自分のためだけに使える金。
それらを、意図的に削っている。
格好つけて言えば「集中」。
正直に言えば、自分を試すための禁欲だ。
逃げ道を減らさないと、
私はまた、楽なほうに流れると分かっている。
だから戻れない線を、いくつか越えた。
4. 300万円を失って分かった。「稼ぐ」だけでは壊れる
かつて私は、物販で300万円を失った。
目的は単純だった。「稼ぎたい」。
数字を追い、再現性を信じ、
感情を切り捨てた。
結果、金より先に、心が壊れた。
だから今は、稼ぐことを前提にしない。
その代わり、自分の思考と感情を、逃げずに言葉にする。
後悔。
嫉妬。
自己嫌悪。
言い訳。
それらを、AIと一緒に掘り起こす。
私はこれを、**「種言(タネゲン)」**と呼んでいる。
すぐに金にならない。
評価もされない。
だが、
自分の人生に、説明責任を持つための作業だ。
5. 息子へ。これは、父親の覚悟表明だ。
もし将来、お前がこの文章を読むことがあったら、
覚えておいてほしい。
父親は、完璧じゃない。
怖がりで、要領もいいほうだ。
だからこそ、
「楽な人生」を選び続ける自分が、一番怖かった。
金を残せるかは分からない。
成功談も約束できない。
ただ一つだけ言えるのは、
逃げなかった記録だけは、ここに残す。
今年、父親は本厄だ。
だが、不運の年だとは思っていない。
人生を組み替えるための、強制リセットだ。
お前の寝息を聞きながら、
父親は今日、確かに一線を越えた。
これは、
自分への覚悟表明であり、
お前への未来の手紙だ。


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