「損切りできない性格」が、ブログで初めて武器になった。

代償

物販を始めた頃、私には「損切りができない」という癖があった。

在庫が売れなくなっても、「もう少し待てば売れる」という言葉が頭の中をぐるぐると回り続けた。価格を下げれば利益が消える。かといってそのまま待てば資金が減る。どちらも選べないまま、在庫だけが増え続けた。

数百万円が消えるまで、その繰り返しだった。

「もう少し待てば」で、在庫が部屋を占領した

物販を本格的に始めたのは2019年のことだ。最初の数ヶ月は楽しかった。仕入れた商品が売れるたびに通知が来て、月に2万、3万と数字が伸びていくのを見ながら「これはいける」と思っていた。

雲行きが怪しくなり始めたのは、半年が過ぎたころからだった。

仕入れ値が上がり、競合が増え、売れていた商品が急に売れなくなった。棚に積まれた在庫を見るたびに、「もう少し待てば売れる」と自分に言い聞かせた。値下げすれば利益がなくなる。でも待てば資金が減る。判断が鈍った。焦って大量に仕入れても、それも売れなかった。

経済学の言葉で言えば「サンクコスト(すでに払って回収できないコスト)」の罠だ。すでに払ったコストを、これ以上の損を出さないための理由に使い続けた。「ここまでやってきたのに」という気持ちが、冷静な判断を上書きした。

気づいたときには数百万円が消えていた。

損切りができなかった。それが原因だった。そう結論づけて、2022年に物販をやめた。

「性格の欠陥」として片付けた

物販をやめた後、私はこの性格を「欠陥」として片付けた。

損切りができない。見切りをつけられない。ずるずると引きずる。副業本や投資の教科書には、「損切りできない人間は資産形成に向いていない」という趣旨の文章がよく出てくる。読むたびに、自分のことを言われているような気がした。

その後に始めた仮想通貨とFXでも、同じことが起きた。含み損が出た瞬間に手が止まる。「もう少し待てば戻る」。ナンピン、SL移動。2025年7月に両方やめるまで、この癖は変わらなかった。

7年間で3つの副業を試して、どれでも同じ癖が出た。性格は変わらないのだと、そのとき思った。それどころか、この性格がある限り、お金を動かすタイプの副業には向いていないと結論づけていた。

ブログを始めて、初めて気づいたこと

2025年の秋、ブログを始めた。稼ぐ手段というより「何かを積み上げる場所」として始めた感じだった。

最初の数ヶ月、記事はほとんど読まれなかった。アクセスが増えない日が続いた。物販のときなら、「これは売れない商品だ」と判断して撤退するタイミングだった。

でも、撤退しなかった。

理由は単純だった。書いた記事は、翌日に消えない。読まれなくても、そこにある。売れない在庫は場所を取り、資金を食う。でも読まれない記事は、お金を失わない。時間は使っている。ただその時間は、積み上がる時間だった。物販のときと同じ時間の使い方が、ここでは別の性質を持っていた。

「もう少し待てば」という癖が、ブログでは違う形で動いていた。

物販のときは損失を先送りするための言葉だった。ブログでは、蓄積を続けるための姿勢になっていた。同じ言葉が、同じ癖が、ここでは別の意味を持っていた。

その気づきが来たのは、書き始めて3ヶ月が経ったころだった。記事の数が30本を超えたとき、ふと思った。「これ、損切りできなかったのと同じ動きをしている」と。

違うのは、失われるものがないという一点だけだった。

性格は変わらなかった。場所が変わっただけだった。

今、ブログを書き続けている理由のひとつに、これがある。

損切りできない性格は、直っていない。今でも一度始めたことをやめるのが苦手だ。判断が鈍る瞬間がある。「もう少し」と思い続ける癖は残っている。

でもブログという場所では、その癖がマイナスに動かない。書いた文章は積み上がる。放置しても負債にならない。「もう少し待てば」の先に、減るものがない。

物販では欠点だったものが、ブログでは動力になっている。

性格を変えようとして変えられなかった7年間の後に、場所を変えてみたら、変えなくてよかったことに気づいた。欠点を直す必要はなかったのかもしれない。それが機能しない場所にいただけだったのかもしれない。

あなたが「欠点だ」と思っていることは、本当に欠点だろうか。場所が合っていないだけではないだろうか。

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